なぜ声掛けに反応しないのか、なぜ常に動き回っているのか。低登録、感覚探求の視点から解説。

皆さんこんにちは、作業療法士の春斗です。

今回は感覚統合http://haru-ryouikublog.com/2020/09/03、前庭感覚http://haru-ryouikublog.com/2020/09/05、固有受容覚http://haru-ryouikublog.com/2020/09/08に続く感覚についてのお話になります。前の記事を見られていない方は見てからのほうがより理解が深まるのでぜひリンクから飛んでください。


感覚統合のお話の中で何度も【覚醒】という言葉が出てきたと思います。

繰り返しになりますが、覚醒とは「脳がどれぐらい起きているか」ということです。覚醒を適切な状態に維持することが学習、社会性へと繋がってきます。これまで覚醒を維持する手段として「前庭感覚」や「固有受容覚」を紹介してきました。

それとは別に、感覚刺激の受け取り方に偏りがあると【低登録】【感覚探求】【感覚過敏】【感覚回避】という状態に当てはまる可能性もあります。これは感覚プロファイルという質問式の検査で各項目「平均」「高い」「非常に高い」という結果に分かれます。

全て平均という結果の子どももいれば、全て非常に高いという結果の子どももいるし、低登録と感覚探求は非常に高いけど、感覚回避と感覚過敏は平均という子どももいます。

高いから悪い、という訳ではなく、それがその子の感覚の捉え方なので、そこから適切な支援方法を導き出せばいいだけです。園や学校へ子どもの行動の理由を伝える手段としても有効的です。

今回はこの中の【低登録】【感覚探求】に焦点を当てて説明をしていきます。

http://www.nakano-d.jp/

低登録とは

Baby Holding White Wooden Stool

低登録とは世間一般的にいう「鈍感な人」です。感覚刺激が脳に届きにくい状態の為覚醒が上がりにくい、もしくは上がっても維持しにくいという特徴があります。

★困り感

ぼーっとしているように見える、一回の声掛けで反応しない、注意が持続しない、姿勢が崩れやすい(機能面除く)、切り替えに時間がかかる、表情の変化が少ないなどがよくある困り感です。

興味関心にかなり影響される所でもあるので、「好きな事は何時間も取り組める」「苦手なことになると5分も姿勢がもたない」というのはもしかしたら低登録が関係しているかもしれません。


☆支援方法

声掛けに反応しない、もしくは返事だけして動かない→視野外からの声掛けは自分に向けられたものだと認識していない子どももいます。

本人の視野内に入ったり、肩をトントンと叩き(固有感覚)注意を確保してから声掛けを行う必要があります。余裕があれば「今なんていったっけ~?」と軽く確認ができると「あ、聞いてなかった」と本人の気づきを促すこともできます。

「何回も言ったでしょ!」「なんで無視すんの!」と思う気持ちも分かります…分かりますが気付いていないのに急にそんなこと言われたらびっくりするし、更にやる気失くしてお互いにイライラして…と悪循環になってしまうので、少し関わり方、伝え方を変えて子どもの反応を見てみて下さい。

そして気付けたとき、すぐに行動できた時は「聞いてくれてありがとう」「よく気付けたね」と積極的に伝えていきましょう。それだけで本人の意識は高まります。

大人でも「○○さんはよく周りのことに気付くよね」「いつも手伝ってくれてありがとう」と言われたら意識するのと同じです。

指しゃぶり、玩具を口に入れる、鉛筆を噛む、貧乏ゆすりをする、これらの行動は低登録の特性によって上がりにくい、そして下がりやすい覚醒を調整するために固有感覚を入力している状態ということになります。

ちなみに僕はパソコンでの入力が長くなってくると覚醒が下がりやすかったり、20分以上の会議になると途端に集中力が切れるので勝手に低登録が高いんじゃないかな~と思っています。

作業療法士の国家試験は午前100問、午後100問をそれぞれ2時間40分で解いていくのですが、僕にはとても耐えられません。

そこで50問解き終わったタイミングでトイレに立ち、全部解き終わり見直しの前のタイミングでトイレに立つ(特に行きたい訳でもなく)というパターンを定着させ良い覚醒の状態を保っていました。(このパターンを定着させるのに模試の段階から何度も色々なパターンを試しました…めっちゃトイレいくやん…って思われていても国家試験合格の方が大事…!)

感覚探求とは

Man and Girl Running on Asphalt Road

感覚探求とは世間一般的に言う「元気な子」「活発な子」です。「たくさん動いて満足した!!」と感じる閾値が高いので、より多くの感覚刺激を求めている状態です。

アニメや漫画の主人公に多いタイプですね。急に海賊王になる!!とか地球を破壊してやる!!とかどう考えても元気が有り余ってますよね…別の言い方をすると、自由が認められた世界で実力を発揮しやすいタイプです。

★困り感

落ち着きがない、激しい遊びを好む、集中力がない、危機管理能力が低い(高いところから飛び降りるなど)、余計な動きが多い、などがよくある困り感です。

「なんでこんなに動き回ってまだ元気なの…」と思いきや電池が切れたように元気が無くなったり、寝たりすることありませんか?これは感覚探求の欲求が満たされたことによって急激に疲労が感じられたせいかもしれません。

前庭感覚の説明で出てきたグルグルや高い高いなど激しい遊びが好き、その場でクルクル回る、物を横目でみるなどの行動も、「満足した!!」と思う感覚を能動的に入れている状態です。


☆支援方法

大きく分けて「①事前に感覚入力を行う」「②常に感覚を入れ続ける」「③事後に感覚入力を行う」の3つに分かれます。

①指示が入りにくい、スケジュールから逸れやすい、やり取りが続きにくいなどの子どもの場合は先に感覚入力を行い、本人の「動きたい!」という欲求を満たしてから机上活動ややり取りへと移った方が効率が良く学習効果も上がりやすいです。

嫌々取り組んだ30分と、積極的に取り組んだ5分では後者の方が圧倒的に将来に繋がります。ここで「この人は感覚を満たしてくれる人なんだ」と意識してもらうことで③に繋がってきます。


②動きたい欲求をMAXまでは高めずとも、適切な状態をできるだけ長く維持させるための方法です。プリントを配ったり道具を集める役割を与える、プリントの問題が終わったら立って先生まで見せに行く、定期的に水を飲みに行く時間を作るなど、周囲に認められた形で体を動かせる機会があると覚醒を維持しやすいです。

学生時代に「暗記は動いている方が覚えやすい」と歩きながらブツブツ言ってる人いませんでしたか?それももしかすると感覚を入れ続けた方が学習効果が上がると無意識に考えての行動だったかもしれません。

そう考えると感覚って知れば知るほど面白いし、その人が起こしている行動を知るきっかけになりますよね。


③発達支援によく使われる「見通しを立てる」ということです。課題をやり遂げた結果好きな感覚を得られることを保証することで、課題に対する注意の持続を高める方法です。

最初から難易度を上げると効果が得られにくいので、「型はめ3つ終わったらトランポリン」「紐通しを10個したら大きいボール」など達成したことによって得られる報酬までの時間を短く設定して、徐々に伸ばしていくやり方が良いです。ここは「課題をやり遂げたらこの人は絶対に報酬をくれる」という信頼関係が大事になってくるので、①の段階が大事になってきます。

自閉や多動傾向のある子どもは、自分が行った行動に対して貰える報酬までの時間が長ければ長いほど結果と結び付きにくいです。少し分かりにくいので例を出すと、

「子ども:ちょうだいのジェスチャー」→「大人:(嬉しいから)わ~すごいね~!!よくできたね~!はい、どーぞ!」「子:(わーいお菓子貰えた)」ではちょうだいのジェスチャーをしたから貰えた、という意識が薄れていまします。より行動と結果を結び付けたいのであれば、

「子:ちょうだいのジェスチャー」→「大:はい、どーぞ、ちょうだいできたから貰えたね」ぐらいシンプルな方が行動と結果が結び付きやすいです。


目線が合いにくいという子どもの場合は、この時渡す物を大人と子供のちょうど中間に配置し、物を取るときに自然と大人の顔が見えるようにすると「この人から貰ってるんだ」という他者意識に繋げることもできます。

これが定着してきたら少しずつ大人が反応する時間を伸ばし、子どもの待つ練習へと繋げることもできます。

おわりに

このように感覚は○七感(視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚、前庭感覚、固有受容覚)と●低登録、感覚探求、感覚回避、感覚過敏が相互に作用しあっています。

最初に書いた通り、低登録と感覚探求が両方とも高い場合ももちろんあります。上に書いた支援方法が必ず上手くいく訳でもありません。

感覚プロファイルで検査したり日常の様子を見たり聞いたりする中で子どもに合った支援を探していくのが一番です。

身近な作業療法士に相談するか、いない場合は僕で良ければ話を聞くのでいつでもご相談下さい。

次回は【感覚回避】と【感覚過敏】について書いていきます。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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参考書籍

感覚統合についてはこの2冊を読めばおおまかに理解することができます。少しずつ買いました!という方も増えて来ていて、この本があるだけで感覚について相談頂いたときに話しやすいので是非。

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応用行動分析(ABA)ってよく聞くけどよく分からない、本が多すぎて選べないという方におすすめです。言葉はどのように獲得されるのか、ジェスチャーを獲得するにはどうしたらいいのか、自閉症の子どもとどうやってコミュニケーションを取ったらいいのか悩んでいる方に見て欲しい本です。(個人的には2の方が分かりやすい)

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感想(22件)

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