こんにちは、作業療法士の春斗です。
今日は小学校1年生の男の子に対して行った療育について紹介していきます。
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①目の体操プリント
学校から「字が枠からはみ出る」「ひらがなが覚えられない」「文を飛ばして読むことがある」との困り感が挙げられていました。
(学校の先生全く支援できていなくて酷い状況だったので、それはまた機会があるときにご紹介します)
字が枠からはみ出るということは、「視覚と運動の協応」が苦手であることと、「力の調整が苦手」であることが考えられます。
視覚と運動の協応を更に細かく分析すると、「眼球運動」、つまり「見る力」がどれだけ備わっているかを評価する必要があります。
眼球運動には瞬間的に目を動かす「瞬発性眼球運動」と、動くものを追い続ける「追従性眼球運動」に分けられ、更に6つの筋肉によって目の動きが調整さています。
この子の場合、瞬間的に目を動かすことはできていますが、持続して見続けることに苦手さがありました。
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つまり文字をぱっとみの形で捉るため書き間違いが生じたり、本読みで文を持続的に見続けることの苦手さがあるかもしれないということが考えられます。
眼球運動においては、左右はかろうじて目と頭部の分離ができていましたが、上下は目の動きに伴って頭部も一緒に動いている状態でした。
「見る力」にも段階があって、
①自分も対象物も止まっている
②自分が止まっていて対象物が動いている
③自分が動いていて対象物が動いている
④自分も対象物も動いている
に分かれます。
この子の場合は目と手の協調性の前に、まずは「見る力」を高めないといけなくて、その中でも「自分も対象物も止まっている」環境で行うのがベストという事になります。
そのためまずは机上課題で目の体操プリントや間違い探しなどを行っています。これができてきたら今度は広い空間での活動へと繋げていきます。
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ただプリントをやるのと、子どもの課題(ここで言う所の眼球運動)や適切な環境を設定するのとでは大きな違いがあります。
療育施設で「ビジョンとレーニンやってます」という所を多く見かけますが、ただ眼球運動のプリントをするだけでは何も意味がなく、その子の現在の発達段階に合わせて行う必要があります。
この子の場合は、文字や数字がたくさんあると見落としや疲労に繋がりやすいので、定規を用いて必要な所だけが見えるよう支援を行いました。
他にも色々方法がありますが、学校で一番早く確実に取り組んでくれる方法として今回は定規を用いました。
透明の定規やキャラクターの定規だとあまり意味がないので、真っ白のものを使ったり、定規に白い紙を貼りつけて行っています。

定規を使う事で格段に見落としが減り、本人が自分で8割使えるようになった段階で学校へと紹介しました。
学校の先生があまり支援に協力的でない場合、一方的な提案や真新しい支援内容は受け入れが悪いです。
そのためまずは手軽に、そして確実にできる支援内容から伝え、そこで「あの先生の言う事は信用できる」と思ってもらえると、次に多少無茶なことを言っても受け入れてもらいやすいです。療育者も学校の先生のタイプに合わせて伝え方や支援の手順を工夫する必要があります。

②縄跳び
この子は協調運動の苦手さもあるので、運動課題も行っています。
縄跳びは「上肢」と「下肢」の動きに分けて評価を行っていきます。
この子は跳ぶと同時に縄を回すためタイミングが合いにくく、なおかつ勢いよく跳ぶため着地後後ろに倒れこんでしまいます。
回す動作は肩からの動きになりやすく、肘を固定し手首のみで縄を回すことが苦手です。
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つまり上肢は肩-肘-手首の分離の未熟さ、下肢はタイミングよく、テンポよく跳ぶこと、跳ぶ強さの調整の苦手さ、そしてそれら全部を協調的に行うことが苦手だという事になります。
今日は跳ぶ動作に焦点を当てて、トランポリンを用いて介入を行いました。
この子は体を動かすことが大好きですが、力の調整が苦手なため常に全力で跳んでしまいます。これだと縄跳びに必要な「リズミカルに跳ぶこと」に繋がりにくいです。
そのためまずは太ももの間に直径25㎝ぐらいのボールを挟んで跳んでもらいます。
ボールを挟むことで落ちないように気を付けながら跳ぶことができるし、股関節に力が入ることで腹圧も上がり、ボディイメージの向上にも繋がるため姿勢保持の力も高めることもできます。
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これだけだと飽きてくるので、次は大きめのわっかと小さめのわっかを準備して、そのわっかから出ないようにジャンプをします。
わっかを基準にすることで同一ポジションで跳ぶことを意識することができます。
大きめのわっかから行うのは、この子が失敗に対して反応しやすいので、先に成功体験を積んでおくのと、失敗した時に戻れる場所を作っておくためです。
小さいわっかだと気持ちが高まるにつれてはみ出すことが多くありましたが、何度かわっかを踏むことでこちらから声かけをせずとも自分で意識することができ、最終的にはわっかからはみ出さないように跳ぶ力を調整しながら跳ぶことができました。
縄跳びに対する介入は今回からなので今日はここまでですが、トランポリンを跳びながら風船を打ち合うことで上下肢の協調動作や視覚と運動の協調性にも繋げることができます。
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今回はこの子が最後まで取り組んでくれたのでよかったですが、途中で飽きたり上手くいかなかったときのために次のパターンや目的も考えながら療育を行うと療育者も余裕をもって取り組むことができます。
③好きな遊び、フィードバック
最後は好きな遊びを5~10分程度行い、この間に保護者とフィードバックを行います。
2学期の終わりに感覚プロファイルを元に作成したパワーポイントをお母さん伝えで支援級の先生に渡して下してもらい、その報告がありました。
酷い対応をされてからその先生とはあまり話していなかったみたいですが、その用紙をきっかけに対応を変えて下さったとのことでまた少しずつ話すようになったみたいです。
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少しでも力になれて嬉しい限りですが、恐らく最初からこの用紙を支援級の先生に渡していてもここまですんなり受け入れてくれなかったと思います。
そのために学校訪問をして、確実に、そして手軽にできる支援から始め、こちらのことを知ってもらう所から初めていく必要がありました。
「なんで分かってくれないんだ」「どれだけ話しても無駄だ」と割り切るのは簡単ですが、それで損をするのは子供で、それで辛い思いをするのは保護者なんですよね。
そうならないように療育者はどう伝えたら理解してもらえるのかしっかり準備しておく必要があります。
ここを保護者がするっていうのはかなり負担が大きいです。なので園や学校の先生と上手くいかない時は遠慮なく療育者を頼って下さい。

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