こんにちは、作業療法士の春斗です。
今日は小集団療育について紹介します。
対象は中2~高1までの7名で、全員男の子です。時間は活動内容によって変わり40分~2時間程度です。

目的は〈社会経験〉です。
僕の事業所は利用者数が多い関係で、放課後デイの利用者には前期(4~9月)のみ、後期(10~3月)のみで分かれて頂いています。(一部除く)
今日紹介するグループは後期から開始で、半年間療育を行ったらお休み期間に入ってしまいます。
そのためより明確に目標を設定して、お休み期間中にも繋げられるような支援が必要になってきます。
このグループの目標は先程も書いたように〈社会経験〉です。その中でも今回のクールは【1人で生活するためには】に重点をおいて実施しています。
そして全体を通して共通して行っているのが、【スマホを使って自分で情報を調べる】ということです。

中学生、ましてや高校生以上になってくると、個人の力を伸ばす以上に、環境をいかに上手く使っていくかが大切になってきます。
大人だって自分の力でどうにもならないときは人やネットを頼りますよね。
子どもの中には頼り方を知らない子がたくさんいるので、就職後の二次障害を予防する意味でも「頼る力」は必要不可欠になってきます。
今回は7人グループで個人にスポットを当てていたらとんでもないことになるので、1回目からの療育を順に紹介していきます。
1回目〈一人暮らしするためにはどんなことが必要?〉
この内容が全12回の療育の基礎となってきます。タイトルにある通り「大人になって1人で生きていくためには、どんなことが必要だと思う?」と聞き、それぞれ大きなテーマを3つぐらい考えて貰います。
例えば「仕事」「お金」「住む場所」などです。そこから連想ゲームのような感じでどんどんイメージを広げていきます。
仕事はなにをしたいのか、その仕事に就くためにはどんな学校に行かないといけないのか、行きたい学校は近くにあるのか、近くにない場合はどうしたらいいのか。
お金は何のために必要か、日常でどれくらいのお金が必要か(家賃、光熱費、食費など)

生活のスタイルにはどんなのがあるか(実家、一人暮らし、シェアハウスなど)、それぞれの生活スタイルのメリットデメリットはなにがあって自分に向いてると思うのはなにか
みたいな感じで実施しました。もちろん分からない情報はその都度調べてもらいますが、どんな単語で検索したらいいのか、ホームページのどこに必要な情報が書いてるのかを掴むのには時間がかかるので、サブのスタッフが介入しながら行います。

2回目〈電話の掛け方を知ろう!〉
病院やお店の予約をする時、体調不良や急な都合で仕事を休む時、寝坊して仕事に遅れそうな時などなど、社会で生活していく上で必ず必要になってくる力です。
今回はある程度設定された環境の中で実施しています。
設定は「療育がある日に37.8°の熱が出て頭痛もするので、休むことにしました。先生に電話して休むことを伝え、次回の日程まで確認しましょう」という内容です。
これを元にカッコ埋め方式で会話の内容を考えて行きます。そして考えた内容を元に実際に事業所に電話をかけて貰います。
定型文通りに読むことはできるけど想定外の質問がきたら固まる子、伝え終わるとホッとして相手が最後の挨拶をしている途中で切ってしまう子、話すことに一杯一杯で聞いた内容を覚えていない子と様々です。
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これでいいんです。
まずは経験して、その中で次はどんなことに気を付けたらいいか考えていきます。
最初から「こんな質問も来るかもよ」「メモ取る準備してた方がいいよ」というのは簡単ですが、「気付き」→「改善」→「実践」を繰り返し行っていくためにも、最初の気付きを促すことが大切になってきます。
そして終了後は保護者にもお休みする時や遅れそうな時は本人から連絡するよう協力をお願いし、継続して経験を積んでいきます。
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3回目〈お金の払い方によるメリットデメリットを知ろう〉
恐らく事業所内でこのテーマを元に療育を行ったのは僕が初めてです。
これは僕の中でかなり大事なことですが、あまり行われていないことです。どんどん時代が変わりお金の価値観や支払方法が変わる中で、絶対に知っておかなきゃいけないことです。
今回は「現金払い」「カード払い」「スマホ決済」のメリットデメリットをパワーポイントにまとめて説明していきました。
ただ説明するだけだとかなり退屈になるので、合間合間で興味を惹きそうな話題を入れながら行いました。

「カード払い」や「スマホ決済」の説明をすると、「じゃあ働かなくても平気だね」と答える子がいました。
冗談で言っている訳ではなく、この子は視覚的に捉えられないことのイメージが苦手なので、本気でそう思っているんです。
そこで彼が質問をしてくれて、更に細かく説明する機会を与えてくれたので伝えることができましたが、このまま大人になってお甘い話に乗せられてしまったらと思うと怖いですよね。
障害者という立場を利用されて搾取されないためにも、お金に関する知識は大事になってきます。

そして終了後保護者には「普段どのようにお金を払っているのか、なんでその支払い方法を選んでいるのか、管理はどうしているのか等これを機会に話してみて下さい」という風に伝え、実生活へと繋げていきます。
〈ボウリングに行き公共の場でどう過ごしたらいいか考えよう〉
グループの中には、経験の少ないことや苦手な事に対して過剰に拒否反応を示す子が多くいます。
中学生や高校生、社会人になると余暇活動の幅が広がってきます。
その中で「やったことないから行かない」ということにならないためにも、ここで経験する場を設けています。
明らかに適してない重さのボールを選ぶ子、指が穴に入らないサイズのボールを選ぶ子、裸足でくる子、靴代があることに異論を唱える子など様々です。
経験した後保護者から「何回誘っても行かなかったボウリングにようやく家族で行く事ができて、本人も楽しそうでした。」と教えてもらいとても嬉しかったです!

5回目〈予算を元に調理に必要な材料と作り方を調べよう〉
いくつか調理の案を出した中から皆で話し合って作る料理を決めてもらいます。
決まっているのは「調理時間」と「予算」です。自分たちが食べたいものを選ぶのも大切なことですが、選んだ料理が本当に時間内にできるか、予算はどの程度必要なのか、これを役割分担してスマホで調べていき、最後に皆で合わせます。

調べる前にある程度金額の予想をしてもらいますが、めちゃくちゃ高く予想する子、低く予想する子と様々です。
しかしあくまでもネットでの値段になるので、ここから「次買い物に行くからそれまで買い物に行ったらよく値段見てみてね」と生活に繋げていきます。
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6回目〈計画したことを元に買い物に行き、実際に作ってみよう〉
前回考えた内容を元に実際に買い物に行きます。
すると今まで値段に全く興味を示していなかった子が、「他のお店の方が安かったよ」「賞味期限大丈夫かな」なんて言い出すんです!嬉しい限りですね…
最初に書いた通り、この子たちと関われるのは半年間しかありません。この中で全てを伝えることは無理だし、そんな押し付けられたことは誰も覚えていません。
大事なのは〈きっかけ〉を与えることで、それを子ども-保護者-療育者で共通して行っていくことです。
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7回目〈公共交通機関のメリット・デメリットを知り、目的地までの行き方を調べよう〉
これが今回の活動です。
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次回初詣に行く予定なので、そこまでの行き方を調べます。
まずは皆が知っている移動手段について答えてもらいます。
徒歩、自転車、車、タクシー、バス、電車、飛行機、ヘリコプターなどなどたくさんでてきます。
その中からそれぞれ1~2個選んでもらい、スマホを使ってメリットデメリットを調べていきます。
普段乗っている車は実は〇〇円かかっている、タクシーとバスはどっちの方が高いのか、一駅分の電車は何分ぐらいかかるのかななど、たくさんの事を調べました。
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新しい知識が入るのにわくわくしている様子が伺え、みんな僕が指定した以上の情報を調べて教えてくれました。
そしてここからはより条件を細かく設定して調べていきます。
「〇月〇日に〇〇神社にいきます。到着時間は15時です。集合は〇〇駅で、そこから電車に乗って〇〇駅に行き、着いたら歩いて〇〇神社までいきます。」と指定をします。
この中から最初の駅から次の駅までの到着時間、到着した駅から神社まで歩いて着く時間を合わせて考え、15時に間に合うように行くには何時の電車に乗ればいいかを調べます。
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そうすることで地図アプリを使って目的地まで行き方(時間)を調べる事、待ち合わせ時間に合わせて時間を組み立てる事、1日に必要なお金(電車賃、お賽銭、飲み物代など)を考える事に繋がってきます。
よく放課後デイで〈おでかけ〉に行っている事業所があります。お出かけは子どもの興味関心を高めやすいし、経験としてはとても大切なことです。
ですがそれだけで終わらせてはもったいないので、事前にしっかり準備をして行うことが大切です。
その結果準備が足りなかった、必要な情報を調べられていなかった、不必要な情報を調べていたということへの〈気付き〉がでてきます。

しかしぶっつけ本番になると心の準備ができてなさすぎて、その気付きまで達さないことが多いです。
小学生の内はまだそれでもいいかもしれませんが、中学生以上になると〈経験〉+〈気付き〉をいかに作り、それを日常生活に落とし込むことがより大事になってきます。

ということで、今回は中学生~高校生の小集団の内容紹介でした。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
内容よければいいね、RTよろしくお願いします。リプやDMでのご意見、質問もお待ちしています!
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